空気の流れを利用する

sectionx80自宅の近くで売りに出ている家があった。駅に向かう途中にある某住宅メーカーによる建物で、ある日突然、(関係者にとっては突然ではないだろうけど。)売り出し中ののぼり旗が立っていた。ある朝、いつものように駅に向かって歩きながら何となくその家を見て、「あれっ」と思った。グレー色のプラスチック樹脂系の外壁のあちらこちらにそこだけ白く色が抜け落ちた、まるでしみの様な痕がある。
外から見るその家は人が住まなくなって、急に年老いたような表情の家になっていた。

建物はその場所を利用する人の活動があって初めて存在するものだ。 建物の中を人が歩いたり、話したり、料理をしたりという活動は室内の空気を動かし、熱が移動し、そのことによって、建物それ自体を活性化させる。だから人が住まなくなった建物は呼吸をしなくなった人間の様に急に傷みが激しくなってくる。

自然の空気の流れを利用し、建物本体を換気する事は人が住む事と同じくらいに、建物を長生きさせるための有効な手段だ。
私の家は地下を除き木造であるため、構造体を換気する事は建物を健康な体に保つと言う意味ではより有効な事である。
ここでは外壁の中に空気層をもうける事により、壁の中に風を通 し、 木の構造体を常に乾燥させるようにしている。
図に示すような空気層を挟む二重の壁 には実はもう一つの効果を期待している。
夏、温度計は25℃位なのにそれ以上に暑苦しいのは、昼間の太陽光線により暖められた屋根や壁が室内に輻射熱として放出されるためである。夏期の日射により外壁の中に吸収された熱をこの空気層を通 して外部に流し出す。その事により太陽熱が建物に蓄熱されないようにする。
屋上は床から浮かすようなかたちでウッドデッキを 敷いている。太陽の日射によって暖められたウッドデッキの下は風が流れる事により、建物それ自体は蓄熱されない 。

屋上のウッドデッキは雨音を緩和させるという思わぬ効果も持ってくれた。