IRAN-Yazd-2

yazd風の塔

ヤズドの街に入ったのは6月の下旬頃。しかし、とにかく暑い。町の中のある 散水用の水洗の蛇口をひねり、頭からバシャバシャと水をかぶっても10分もしないうちにカラカラに乾いてしまう。そんな強烈な陽射しの下、モスク以外に色彩 が無い茶褐色の街は陰影のコントラストが激しく、ほとんど光と影だけの抽象画の世界だ。迷路状に交錯する街を歩いていると白昼夢を見ているような不思議な感覚におそわれる。そんな厳しい気候風土の街、ヤズドにはちょっと、いやかなりおもいしろい建物の造り方がある。バードギル、 風の塔と呼ばれる塔がそれ。

小高い丘の上から、鳥瞰的に街を眺めると住宅の屋根にくっついたたくさんの小さな塔が 見える。煙突状の立方体の塔の上部の 2面は開口となっており、片方の窓から入った風は 塔の内部で隔てられた壁により下の室内まで降ろされ、そして室内を巡ってまた、別 の片方の窓に向かって上がっていき外に出て行く。自然のエネルギーを利用した冷房設備だ。
さらにこの二つの窓はトップライトとしての機能も兼ねている。厚い日干しレンガの壁で囲われた建物の外壁は、 窓などの開口部が非常に少ない。 風の塔のトップライトはそれを補う役目をも果 たしている。
う〜ん、感心してしまう。こうやって旅で得る建築のヒントは多い。建築家のつくり出した素晴らしい作品はもちろんだが、こうした無名の建築の知恵はまた素朴な建築の楽しさを与えてくれる。
写真はヤズドの町並みと 風の塔を内部から見上げたもの。